なにもない野原に、一本の線が引かれると、
そこは誰かがかけっこをするゴールになる。
砂埃の舞う路地裏に、ひとつボールがあるだけで
こどもたちは集まってサッカーをはじめる。
陸上競技場のトラックに、
スタジアムのフィールドに、
体育館に、プールに、道に、雪山に、
線が引かれ、スポーツが始まる。
ボールを奪い合い、
バットでかっ飛ばし、
スパイクで擦り上げ、
思い切り遠くへ投げ、
ラケットで跳ね返し、
私たちの心も跳ねる。
線と球。
たったこれだけのものが、
人類を突き動かし、感情を揺さぶってきた。
私たちもスポーツに動かされた中のひとりだ。
削ぎ落とされた肉体の美しさを
感情を爆発させたその表情を
限界を超えようとする瞬間に額に光る汗を
写したくて、今日もカメラを構える。
センキュー。